日時 | 平成25年2月14日(水) |
---|---|
場所 | じゅうろくプラザ2階ホール |
参加者 岐阜市長 見附市長 山口香氏(筑波大) 久野譜也(筑波大)
開会挨拶
細江 茂光 岐阜市長
岐阜市では健幸(※)で、元気に長生き出来るまち=スマートウエルネスシティ(以下SWC)を目指す。これからは健康寿命を伸ばすことが重要。健康であることは自分自身のためだけでなく、医療費、介護費抑制効果も期待でき岐阜市をより良くするための政策に取り組むことができる。このSWCぎふの取り組みを本日の出席者だけではなく、市民全員に理解していただけるように協力をしてほしい。
※「健幸」とは体の健康だけでなく、人々が生きがいを感じ、安心して豊かな生活を送れる状態
スマートウエルネスシティ(SWC)健幸サミット
久野譜也 「健幸都市(スマートウエルネスシティ実現に向けて」
スマートウエルネスシティとは、多くの住民が健幸になるためのまちづくり、即ち「歩いて暮らせるまち」を作ることである。今までの政策として車依存のまちづくりをしてきてしまった。しかし、公共交通の利用、地域コミュニティ構築、社会的役割を持ち続けることが健康であるということが科学的に分かってきたので、これからは市民が便利さだけを追求しすぎない生活に変えなければならないが、行政が変えても、市民が車依存から脱却しなければ変わらない。超高齢化対応の目指すべき健幸都市とは意図しなくても、自然と歩いてしまうとしづくりがこれからの健康都市の方向性である。そのためには、都市の集約化、歩行空間と公共交通の整備、まちのにぎわいなどが必要で、この方向性は、健康課題だけではく、多くの地域課題も解決することが期待される。
シンポジウム:「まちのにぎわいと健幸」
筑波大学大学院准教授 山口香氏
オリンピックの素晴らしさは同じ人間ができる可能性を見せてくれることである。スポーツはできないことができるようになることが喜びになる。トップスポーツでもつらいことばかりではなく楽しい、好きでなければ続かない。歩くときにも何か楽しみがなければ続かない。そのためにはまちづくりが大事である。過去、東京オリンピックを境にまちが変わった。当時のまちづくりは日本が成長していく時代に合わせたまちづくりであった。今度の東京オリンピック招致は、当時とは違う日本をつくり、世界に発信していく国家プロジェクトである。ヨーロッパではまちとスポーツが一体化しているまちがある。スポーツを通してのまちづくりを提案していきたい。
見附市でもまちの特徴を生かしたSWCの取り組みをおこなっている。見附市ではH16にいきいき健康づくり計画を作成した。その取り組みの一つとして健康運動教室をおこない、科学的に療費抑制効果が確認された。しかし、ここ数年参加者が増加しない。そこで興味を示さない住民に対しての効果的な動機付け方法の実証実験をおこなっている。また、ソーシャルキャピタルの高いまちにするために市民の健康づくりを啓発・サポートする人材(市職員)の育成をおこなっている。
※ソーシャルキャピタル:社会・地域における人々の信頼関係や結びつきを表す概念
岐阜市 細江茂光市長
岐阜市ではJR岐阜駅前を中心に整備がされ、減少してきていた中心市街地の歩行者の通行量に近年歯止めがかかっている。今後、中心市街地の歩行者を増やしたい。岐阜市では住むだけで健幸になるまちづくりを推進しており、歩いて暮らせるまちにするために車依存社会からの転換し、公共交通の利用、歩行環境の改善、自転車利用環境の改善をおこなう。将来の人口減少や高齢化に対応した集約型市街地形成として2つのウエルネスエリアをつくっており、柳ケ瀬健康ステーションを中心とした柳ケ瀬ウエルネスエリアと長良川ウエルネスエリアにも健康ステーションの建設を予定している。
ディスカッション
久野)市がおこなっている情報が市民に届いていないことをどのように感じているか。
見附市)行政にとって難しいことは、良いことを行っていてもその情報が市民に届かないことである。現状、市からの情報は主に広報を使って市民に提供しているが、広報だけでは全市民には伝わっていない。また、市職員の認識は市民に伝えるには広報に掲載すれば良いと思っているがそうではない。今回、総合特区の取り組みとして、住民の健康知識を上げることを目的として、新しい広報戦略を進めている。健康情報に特化した広報誌を全戸配布し、その内、一部の住民にタブレットで健康情報と地域情報を配信する。健康情報を提供し、住民の健康知識を上げる実証をしている。
岐阜市)広報戦略は重要だ と思う。しかし、どのような方法で情報発信をおこなっても受けてくれない人をどのようにするかが課題。広報戦略とともに実際に歩きたくなるまちをつくることで市民が歩くように誘導されていくまちにしていくことが重要であると思う。
山口氏)両市ともしっかり考えて取り組んでいると感じた。しかし、市民に情報が伝わっているかという点は課題であると思う。自身が住んでいるつくば市では、公共交通でミニバスが走っているが何時に来るか分からないため車を使ってしまう。公共交通の利用を市民に浸透させるためには時間がかかる。時間をかけて丁寧におこなうことが必要なのではないか。
久野)伝える力が重要であると思うが、どう思うか。
見附市)今まで職員のコミュニケーション力が不足していた。これからは市民に接する職員のコミュニケーション力を上げなければならない。見附市では数年前から朝礼でスピーチをおこなっている。この取り組みをおこなうことで職員のコミュニケーション力に対する意識も変わってきている。また、見附市では地域コミュニティをつくっている。地域コミュニティ組織が結成され、コミュニティを通して市民に発信することで広く伝わっていくと思う。
久野)ヨーロッパは車を入れない空間をつくっており、結果として商店街の売り上げが上がったという事例がある。日本も今後ヨーロッパのように変わっていく必要がある。そこで、市が変わるために市民に必要なことは何か。
山口氏)ヨーロッパではただ歩いている人も多い。日本人はのんびりする機会がないが、特にリタイア後のライフスタイルをのんびりしたものに変えることを意識することで、楽しい人生になるのではないかと思う。
岐阜市)岐阜市では10年前からスローライフまちづくり全国都市会議を主催し、人間は合理的な理由だけで生きているだけではない、人間らしく生きようという運動を行っている。車を利用すると目的の店で必要なものを購入するのみだが、歩くことにより目的の店以外の店にも行くことで、結果的に商店街の売り上げが上がる。人間は合理的に必要なものだけ買って、必要ないものは買わないというのではない。それがスローライフまちづくりである。スローライフとSWCを一緒におこなっていくことですばらしいまちになっていくのではないかと思う。
見附市)見附市ではまちの真ん中の空き店舗を利用して何時間いても飽きない場所をつくったところ昨年は1年間で54万人が利用した。単に公共交通を利用することが目的ではなく、公共交通を使って出かけていく先に賑わいのある空間がある。商店街がその役割となると良い。空間づくり、賑わいづくり、公共交通が合わさることで気づかない人でも家から出たくなるようなまちにすることが目指すまちづくりではないかと思う。
久野)最後に。
山口氏)本日のサミットに多くの参加があり、SWCの取り組みに多くの市民の方が関心を持っていることに感動した。
見附市)岐阜市は自然が多くありながらも、公共交通の最先端の仕組みを取り入れている。住んでいる人はその宝物に気付かない。岐阜市が日本のモデルとなるという気持ちで取り組んでもらいたい。
岐阜市)岐阜市民が幸せと感じてもらえるなるまちにしたい。アンケートによると健康になることが幸せと思う街をつくるという回答が多い。元気で人の世話にならず、社会的参加ができる素晴らしいまちにしていきたい。
久野)多くの人が健幸になれるまちの在り方は見えてきている。岐阜市は全国の先頭をきって動いている市である。良いまちをつくるために、これから市民の皆さんが参加し、意見を出し合うことが必要である。