活動内容

第11回SWC首長研究会

第11回SWC首長研究会レポート PDF版 ダウンロード

  • 開催期間2015年2月9日(月)-10日(火)
  • 開催場所筑波大学東京キャンパス文京校舎
  • 主催Smart Wellness City首長研究会
  • 共催筑波大学
  • 後援内閣府

イントロダクション

 Smart Wellness City(SWC)首長研究会は共通の意識を持った複数の自治体が「健幸」をまちづくりの基本に据えた政策を連携しながら実行することにより、持続可能な新しい都市モデル『Smart Wellness City』の構築を目指すという理念のもと平成21年11月に発足した。今回で第11回目を迎え、58の加盟自治体の内、49の自治体の関係者が一堂に会して、全体テーマである「健康づくり無関心層への対策」を中心として活発な議論が行われた。

出席自治体
栗山町、男鹿市、加美町、大河原町、小国町、伊達市、取手市、浦安市、睦沢町、白子町、柏市、中野区、多摩市、大和市、新潟市、三条市、見附市、上田市、岐阜市、安城市、熊野市、八幡市、高石市、阪南市、河内長野市、田尻町、葛城市、宇陀市、直方市、多久市、豊後高田市、指宿市、南城市

SWC首長研究会代表、共催代表、後援代表より挨拶

久住 時男SWC首長研究会 / 新潟県 見附市長 2009年に始まった首長研究会も今年で7年目、今回で11回目になる。今回の課題は、第1に、健康づくり無関心層に自治体としてどのように対処していくべきか、第2に、各自治体がこれまでどのような成果を上げてきたか、そして第3に、地方創生の課題に自治体としてどのように対応していくかの3点である。これらの課題について有益な議論になることを期待している。
久住 時男
吉川 晃筑波大学 理事 本研究会でテーマとされてきたことが、国家的な課題として認められてきており、社会イノベーションのステージが変わってきていると感じている。筑波大学としても、引き続き研究会の発展のためにサポートを続けていく。
吉川 晃
内田 要内閣府 地方創生推進室 室長 本研究会のテーマがますます国の施策に反映されてきている。安倍内閣の重要戦略のひとつが地方創生であるが、1月20日からそのための推進室が設置された。平成23年に始まった総合特区制度も、地方創生の国家的な総合戦略の中で、ますます重要になる。今後とも皆様と意見交換を進めて行きたいと考えている。
内田 要

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講演 1第11回の狙いと最新トピックの紹介

久野 譜也筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授 サルコペニア・サルコペニア肥満は、特に高齢者において大きな問題要因となっている。三条市と伊達市のデータによると、住民の30%がサルコペニア、16.5%がサルコペニア肥満であることが明らかとなった。サルコペニア肥満は、筋肉の減少に肥満が重なり、生活習慣病の重症化を招き、特に入院費が通常の住民の3倍に押し上げられる結果になっている。これらのことから、サルコペニア肥満は、医療費の高騰につながる可能性が明らかとなった。サルコペニア・サルコペニア肥満の対策は、歩くという有酸素運動に加え、筋力トレーニングが必要になる点に注意しなければならない。今回の中心テーマであるが、社会イノベーションを起こすには、技術、ビジネス、社会システムのイノベーションに加えて、国民のイノベーションが必要である。これからどのような問題に直面するかについて、住民の意識を変えていくために、各自治体として取るべき具体的な対策の検討が今後の重要課題になる。
久野 譜也

特別講演「地方創生を推進するために」

和泉 洋人内閣総理大臣補佐官  昨年の6月に、菅官房長官を中心に地域活性化をテーマとする閣僚会議が開かれた。それを受けて、このテーマを担当する地方創生・国家戦略特別区域担当大臣に石破氏が就任、24時間この問題への取り組みが続いている。昨年末には安倍内閣の総合戦略として地方創生が国家的な政策の中心に置かれるようになった。このような動きは、2008年に始まった人口減少による地方経済の停滞が、日本全体の活力低下につながる懸念があるからだ。他方、アンケートでは、若者の9割が結婚を希望し、平均2.5人の子供を持つことを望んでいる。これは、環境さえ整えば、人口を1億人に維持できる可能性があることを示している。そこで安倍内閣では、1都3県で進む人口集中に歯止めを掛け、地方創生を進める長期的ビジョン、総合戦略をまとめた。これまで首長研究会で積み上げられてきた成果が、国の政策のまさに中心に据えられている。首長の皆様には今後とも、先頭に立って政策を引っ張っていただきたい。
和泉 洋人
意見交換
 東京への一極集中を変える政策として、地方に移転する企業に対する税の優遇策、雇用促進策、地方に就職する学生に対する奨学金返納条件の緩和などを考えている。また農林水産業を中心として、地域に必要な産業を創出することも重要。この点では、パナソニックの植物工場やICT米作り、東大のゲノム研究を利用したベンチャー企業の創出などの新潟の例もある。

集中討議 (1)健康づくり無関心層を動かす施策(1)

三条市の施策群の成果と課題

國定 勇人新潟県 三条市長 高齢化率が38.6%になるエリアは、中心市街地であり、かつて賑わいの中心であった。それを再び取り戻すことが目標。高齢者が外に出る理由は、買い物と通院、そして楽しみのためである。外出きっかけの一つとして、三条市では月に1度、三条マルシェを始めた。多くの人出があり、若者に好評だが、高齢者には関心が低い傾向にある。そこで、全天候型の広場を高齢者になじみのある定期市場の近くに作り、そこで一日を過ごしてもらえるよう外出誘引につながるソフト事業の実施を考えている。
國定 勇人

公共交通の新しい方向性

篠田 昭新潟県 新潟市長 新潟市では、バス利用者が年々減り、路線維持のための補充費用が5年間で最大20億円の負担増になる事態に陥っていた。そこで、この負の連鎖を断ち切るために、連接バス(BRT)を柱とする持続可能な公共交通体系を構築することになった。昨年の市長選では、BRT導入の賛否が大きな争点になった。市議会議員の造反などもあり、説明会を120回も開くなど、たいへんな選挙戦になった。現状と将来を比較する形で市民に理解を求めることがいかに困難であるかを思い知らされたが、逆にこの選挙戦を通して市民の意識を変えることができたことは大きな成果であった。
篠田 昭

実効あるポピュレーションアプローチへの挑戦

神田 昌幸国交省都市局 街路交通施設課 課長 富山市の試みを例として、ポピュレーションアプローチを目指した都市政策を紹介する。生活に必要な都市機能を確保し、公共交通体系を充実させて、コンパクトなまちを作ることが基本になる。それに地域特性に合った種々の関連施策を加えることで実効性のあるポピュレーションアプローチが可能になる。富山市では、LRTと市内電車による交通体系と中心市街地の活性化が基本になり、それに「お出かけ定期券」、「孫とお出かけ」、全天候型のまちなか広場、市民農園、包括ケア拠点計画が加わって、歩数増やまちの賑わいなどの成果を上げている。
神田 昌幸
意見交換
 市中心部開発を説得するには、中心部での投資利益確保が周辺にもプラスに影響するということを伝えることが重要である。
 コミュニティバスと民間バスのミックスを実現する手立てとして、赤字補填を防ぐための運営資金の確保とICTカードの利用を行っている。三条市の試みの朝ご飯利用者は、該当年代の15から20%にとどまっている。民生委員の声掛けが大きな役割を果たしているが、更なる手立てが必要である。マルシェの実現にあたっては、30~40歳代の女性層が主体となり屋台の数が1年半後には10から15店舗に増えたこと、またマスコミ取材に刺激を受け、ようやく商店街にも活気が出たことが大きい。また警察との良好な関係を築くことが鍵になる。全天候型の広場、施設作りが、富山、黒部、長岡、中津川、豊田、明石、姫路、鳥取など全国に広がっている。 無関心層を動かすには、首長の努力をいかに市民に届けるかが鍵を握る。

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話題提供 (1)地域での一次予防を担うこれからの保健師活動のあり方

中板 育美日本看護協会 常任理事 保健師は全自治体に配置されているが分散配置になっている。今後
は、事業こなしの業務ではなく、全庁挙げて組織横断的な取り組みが求められる。保健師の目指すことは、第1に、地域特性に合わせた健康なまちづくり、第2に、障害者や高齢者も健康の人と変わりなく地域で生活できるようシステム体系化していくことである。個別対応ではなく、地域全体として考え、そこに予防の観点から進めることが求められている。今後は自分の生き方や死に方を住民が自分で考える時代になる。自助、互助を基本として、それを共助が支える形である。保健師の有用性は、何よりも住民に近い情報を持っていることである。地域包括的なケア体制の実現のために、保健師が重要な役割を果たせるはずだ。
中板 育美
意見交換
 保健師が自治体の中でうまく活躍できていないような印象があるが、どこに課題があるのか。保健師は地域のネットワークづくりを得意としており、そのネットワークを活用し課題の早期発見・対応に努めている。このような保健師が活用されない課題の一つに、高齢者対応の部署、主管課に保健師が配置されていないことにある。一方、保健師のマネジメント能力の不足が考えられ、現在研修会等を開催しマネジメント能力向上に取り組んでいる。

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集中討議 (2)健康づくり無関心層を動かす施策(2)

健康づくり無関心層を動かす施策 伊達市の取り組み

仁志田 昇司福島県 伊達市長 伊達市はSWC研究会には最初から参加し、健康運動教室等も以前から行ってきており、掛田、白根地区をモデルにSWCを進めている。健幸ポイント事業は、窓口とウェブを通して参加者が予定の1000人に達した。このうち運動プロジェクト非参加者が半数以上、またこれを機に健康運動教室に新たに28人、高齢者筋トレ事業に7人が参加し、健康づくり無関心層を動かすという目標が一定の成果をあげている。
仁志田 昇司

スポーツによる健康ポイント

芦立 訓文科省スポーツ・青少年局 審議官 10月1日からスポーツ庁がスタートする。東京オリンピックに向けてメダルを取ることだけが念頭に浮かぶが、忘れてならないことは、地域の人々がスポーツに親しめる環境を作っていくことである。またスポーツ無関心層をいかにスポーツの場に引き出すかも重要な課題となる。昨年は、地方創生のための総合教育会議が開かれた。地域をトータルに考えた施策が求められていく。スポーツ庁ができると、文科省のみならず、厚労省、国交省、農水省、環境省、外務省からもスポーツ担当官が加わる。2020年のオリンピックのレガシーは、高齢者の運動と健康の推進になる。
芦立 訓

健康ポイント大規模実証の進捗

久野 譜也筑波大学 教授 全国6都市の協力で進めている健康ポイント大規模実証の目的は、健康づくり無関心層を引き出すことである。きちんとデータを取りながら進めていく必要がある。先ず見附市と三条市の実験で、どのようなポイントが有効であるかを調べ、「入会したよポイント」、「がんばってますポイント」等、種々のポイントを考えた。集めたポイントは、地域商品券やポンタ、寄付など、いろいろな用途に使える。始めて数ヶ月だが、無関心層や、それまで運動プロジェクトに参加していなかった住民が参加者の中に多数含まれているなど、ポイントの有効性を示すデータがすでにいろいろな形で現れている。
久野 譜也
意見交換
 体協と協力しながら、国民皆スポーツを目指して、サッカーくじを使いながら、英国型のクラブづくりに取り組んでいるが、お金を使ってスポーツをする文化、そのリーダーになろうとする文化が日本にないことが問題。地域総合型クラブでは、会費を取りながら、いかに質の高いサービスを提供していくかが重要になる。totoの助成金頼みでは、先が続かない。ヨーロッパでは、自分でスポーツをするための場であるだけでなく、クラブハウスでの社交や、子供たちのために芝の管理をするなど社会参加の場となっている。地域総合型クラブ立ち上げを経験して、十分なサービスを用意すれば、会費を取ることに理解が得られることが判った。競技スポーツだけでなく、イベントや学校にない種目を提供するなどの工夫も重要である。無関心層を動かすという点からみると、多少の無関心層を引き出すことには成功したが、歩き中心のプログラムに留まっている。もっと健康の成果の上がるプログラムに移行させていくことが今後の課題。

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報告 (1)自市におけるSWCの成果と課題

藤井 信吾茨城県 取手市長 健康づくりと幸せづくりを2つの柱とし、運動とバランスの取れた食生活の推進、生きがいと地域・家族の絆の強化を進めている。具体的には、健康教室やウォーキングレッスン、親子連れのゴルフ場ウォーキング、夏休みを利用した親子食べ比べ、自治会や町内会活動への高齢者の取り込み、駅前や環状道路の歩行者、自転車環境の整備を行っている。一部では歩行者数が50%以上アップしたという成果が報告されている。
藤井 信吾
阪口 伸六大阪府 高石市長 3箇所の広場で、健康ウォーキングを保健師の指導で進めている。健幸ポイントプロジェクトに参加したことは大変好評。大阪府下で初めて自転車道を整備し、三条市を参考にしてマルシェを始めた。三味線漫才などをとり入れて高齢者に好評である。総合型地域スポーツクラブも、健康のために何でもやってみることが重要。今後も市独自の健幸ポイントなどに挑戦する。
阪口 伸六
市原 武千葉県 睦沢町長 東京から1時間、九十九里から山に入った7300人から7400人の小さな町。人口問題対策として、若者に定住してもらうための賃貸住宅を建設、自治会や消防団への加入、40歳以下などを条件にポイントをつけて、賃貸から始めて、10年後に払い下げることを考えている。健幸のまちづくりのための条例を定め、ノルディックウォーキングや健康教室、ウェルネスのためのワークショップなどの施策を進めている。道の駅は全国30ある重点地区のひとつに選ばれた。道の駅に沿ってウェルネス施設を作っていく予定である。
市原 武

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話題提供 (2)sickケアからhealthケアへ ~ 遺伝子検査の活用

大井 潤DeNAライフサイエンス 代表取締役社長 DeNAでは、ヘルスケア領域を新たな事業ドメインとして注力している。その際に重要なことは、健康・未病のうちからケアをしていくことである。その実現に向け、ITを活用して、個人が自らの健康状態等を的確に把握し、セルフメディケーションに取り組む社会づくりを目指している。第一弾のサービスである遺伝子検査「MYCODE」は、東大医科研との共同研究に基づくサービスであり、これまでわからなかった生まれ持った疾患リスクを知り、予防対策をとることを促す取り組みである。遺伝子検査サービスだけでなく上記の理念実現に向け順次サービスを展開する。
大井 潤
意見交換
 保険加入の面での問題はないのか。保険の運用では、遺伝情報は用いていないと聞いている。遺伝による差別禁止の法整備は課題である。自治体における活用方策として、健康無関心層に対し、遺伝子検査を提供することで、健康行動へ変容する可能性があるのではないかと思っている。その実証をしていきたい。

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集中討議 (3)歩いて暮らせるまちを可能とするコンパクト&ネットワーク化に向けた戦略

見附市の計画

久住 時男新潟県 見附市長 「地方創生」に対して何ができるかということで、この10年間を振り返ってみたい。平成18年に市のグランドデザインを描き、平成21年にSWC首長研究会の立ち上げに加わり、健康と幸せを中心とするまちづくりに向かう。23年に総合特区に指定、種々の条例を制定する。26年には地域活性化モデルケースに選定され、また全国6市と共に健幸ポイント社会実験に加わる。SWC見附のエッセンスは、行きたくなる空間の創出、中心市街地の賑わい作り、歩行及び自転車利用環境の整備、公共交通の再整備、ゾーニング、人材育成、地域コミュニティの構築の7項目に集約される。
久住 時男

コンパクト&ネットワークの推進の方向性

青木 由行国交省 総合政策局 政策課長 今後の人口減少により、地方経済の衰退が進むとともに、住民への生活サービス提供にも支障が出かねない。これに立ち向かうために提唱したのがコンパクト&ネットワークの考え方である。コンパクトというと、主要拠点にすべての機能を一極集中させる誤解があるが、多極ネットワーク型のコンパクト化を目指すべきと考えている。今後は、各地域の特性に応じ、1 一定の集積がある都市のコンパクト化、2 過疎地域における小さな拠点の形成、3 一定の圏域人口を維持する「連携中枢都市圏」(複数連たん型と中核市牽引型)の形成を進めていきたい。
青木 由行

今後の方向性について

伊藤 明子内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局 次長 町・人・仕事創生「長期ビジョン」と「総合戦略」の基本目標は、地方金融機関を巻き込んでしごとをつくる、地方へのひとの流れをつくる、企業の地方移転補助と地方大学の学生支援による地方拠点の強化、結婚・出産・子育て支援、そしてまちづくりである。まちづくりに出てくる「小さな拠点」の構築であるが、これは基本的に都市区域外の拠点づくりであり、ネットワークでつないで都市機能を各集落で分担し合うイメージである。既存ストックのマネジメントで特筆すべきは、特に空き家対策で、除却推進と立ち入りを可能とする規定が入り、改修費補助が入った。最後に、交付金であるが、総合戦略とは別に、各省庁の補助制度を越えた地域再生戦略交付金などもあるので、ぜひ利用を検討いただきたい。
伊藤 明子
意見交換
 連携中枢都市の形成には、複数県にまたがる連携や、県の介在が必要になるケースが増えるだろう。空き住宅の利用では、まだ中古住宅市場ができておらず、ディベロッパーが利益を上げにくい状況にあり、空き家を借り上げて、修繕して貸すことが軌道に乗るまでにはまだ時間がかかるだろう。地域にとって魅力のある産業ということでは、林業が急速に変わりつつある。中国や台湾など、外からの需要が増え、輸出産業として林業が注目されてきている。地方における職場の創出の点からも注目していくべきだ。コンパクトシティの推進を考えるために、その成功要因を整理してみる必要がある。十勝バスではニーズを調べて、それに合わせて公共交通網を作っていること、別の例では郊外にまで路線を伸ばしていること、あるいは共同の会社を作ってコストを削減していることが成功をもたらしている。見附市では公共バスの利用者が3万人から14万人に増えたが、そこでは単に病院に人を運ぶだけでなく、路線に合わせて行きたくなる場所を作ったことが成功要因になっている。持続可能なコミュニティバスの創出は、地域特性に合わせて自治体で施策を考えていく必要がある。土地再生特別措置法などの法制化も、自治体が自ら主役となって、まちのコンパクト化に取り組みやすいようにしている点にその意味がある。

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報告 (2)自市におけるSWCの成果と課題

山下 和弥奈良県 葛城市長 市役所のコンパクト化と、サテライト型のまちづくりによって経費削減を進めている。このためにICTとクラウドを用いたシステムの統合を目指している。これは一方で、市役所行政のスリム化を実現し、年間1億円の節減効果が見込まれている。他方、市民は一枚のカード(マイナンバーカード)を利用して、買い物支援や健康支援、生活支援を受けることができる。システムづくりの研究会には種々の企業や大学研究者が参加し、「葛城モデル」の近隣及び遠隔自治体への横展を総務省の支援の基に進めている。
山下 和弥
細江 茂光岐阜県 岐阜市長 健康寿命の増進、医療費抑制、コミュニティ活性化を目標とし、「歩く」ことをキーワードにまちづくりに取り組んでいる。平成16年には、「多様な地域核のある都市」とコンパクトな市街地をつくる総合計画を立てた。その柱となるのが、公共交通環境の整備、歩行環境の整備、歩きを推進する仕掛けである。
BRT4台を駆使し、路面電車に代わってコミュニティバスが走る。地下水を利用した柳ヶ瀬せせらぎや、長良川プロムナードを整備、歩行を促す様々な仕掛けを考えている。
細江 茂光
豊留 悦男鹿児島県 指宿市長 久野塾の卒業生が提案したデザインを基に、歩いて暮らせるまちづくりに取り組んでいる。その一例が駅前商店街の活性化で、地域の特色を活かしたマルシェ開催による賑わいの創出を目指している。また、指宿といえば砂むし温泉だが、この観光スポットを地域活性化の柱にして、平成26年度から実施されている海岸整備と併せて、駅前から海岸線までの中央通りの一体的整備が進んでいる。SWC成功のかぎは人である。まちづくりとともに人づくりを大切にしたい。
豊留 悦男
鴛海 豊大分県 豊後高田市副市長 桂川を挟んで、西側商店街と東側商店街を、それぞれ「30年代の昭和の町」、「高齢者が楽しい町」にするまちづくりが進んでいる。犬と猫しか歩かなかった町から年間40万人の観光客が訪れる町に復活を遂げた。他方、高齢化率が高く(現在35.9%)、健康寿命も男女とも県下でワースト1と2を頂戴、ウォーキングと運動が大きな課題になっている。このため市では、歩行空間の整備と測定装置の設置、ケーブルテレビを利用したヘルスリテラシーの向上に取り組んでいる。
鴛海 豊

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話題提供 (3)政策におけるビッグデータ活用の方向性

岡田 幸彦筑波大学システム情報系 准教授 自治体やサービス産業のために、ビッグデータの活用法を研究するサービスを提供している。現在常総市と一緒に行政評価に関する取り組みを行っている。自治体の中の対象事業を抽出し、行政評価を行う群と行わない群、実施計画の提出を依頼する群と依頼しない群の4群に分けて、ランダム化比較を行った。その結果、関係者に対するインタビューを含む膨大なデータを分析することで、行政評価がどれほど実施計画と予算編成に影響を与えうるかが明らかになった。常総市ではこれに加えて、各課から有志を集って、ビッグデータの活用法を考える研究会が行われている。
岡田 幸彦
意見交換
 どのようにデータを取るのか、それをどのように分析して、事業計画に活かしていくのか、行政計画の中に入っていない自治体が多い。職員の教育も問題であるが、Key Performance Index (KPI)を定めて、いかに活動を見える化していくかが重要である。

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初参加 首長紹介

渡部 幸男秋田県 男鹿市長 人口問題に取り組んでいる。少子化に対しては子育て支援として男鹿版ネウボラを設置、超高齢化社会に対しては健康寿命を伸ばすため運動環境の整備を進めている。
渡部 幸男
河上 敢二三重県 熊野市長 三重県で最も世界遺産の多い市。市外のみなさんには沢山歩いていただいているが、市民の皆さんの健康づくりのためにも歩いてもらうようにするのが今後の課題である。
河上 敢二
椿原 紀明北海道 栗山町長 札幌市、千歳空港、苫小牧港からそれぞれ1時間の立地条件の良い所にある。議会活動が行政以上に活発であるのが特徴である。
椿原 紀明

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総括

第11回SWC首長研究会の成果と課題の整理

 無関心層は、一つの事業・施策で動くのではなく、いろいろな政策の組み合わせ、パッケージが必要であろう。各自治体によりパッケー
ジの中身は違う部分もあるが、必要な部分や共通部分もあると思うので、そのパッケージづくりをこれまで行ってきた。研究会で議論を重ねることで、パッケージの中身の具体化ができるのではないか。
 これまでのSWC首長研究会で積み上げられてきた取り組みと成果が、国の政策の中心に据えられ、期待されている。今回議論されたことを持ち帰り、日本を牽引していくような取り組みを各自治体で行ってもらいたい。第12回は、SWC首長研究会において初めての地方開催となり、7月21日、22日に岐阜市で行われるので、多くの自治体の参加を希望する。